法事 |
法事のため実家に帰ると和室の畳と襖が新しくなっていました。
祖父母と曾祖父の12回忌・33回忌・37回忌をまとめての盛大な法要です。とても寒くて強い雨が降る中たくさんの方々が集まってくれました。お寺は代々お世話になっていて今回の副住職さんは弟の同級生です。小さな頃からまるで一休さんのようにお盆の暑い日にご住職の代わりに檀家さんのお宅にお経をあげに来てくれていたあの小さなお坊さんがすっかり立派になっていました。
一番前の列で祭壇をみつめながら亡き祖父のことを思い出していました。祖母は早くに亡くなったので記憶にはありませんがその分母がいつも思い出話をしてくれていました。祭壇や装束の金色に輝く装飾や装束の色がとても美しくて質素なお寺の中で大切な場所が色鮮やかに際立っていました。
法要が終わると副住職からのお話を頂き雨の中新しいお塔婆を持ってお墓にお参りしました。昔は33回忌が最後の法要と言われていたそうですが長寿社会になり37回忌も行う家庭が多いとのお話でした。時代と共に形も変わって行くんですね。これから先はいったい・・・わが家は3人兄弟ですが子供がいないのでお墓は将来どうなるんだろうと先のことを考えました。
最近は未婚率の増加やDINKS・そして少子化や親子での遠距離での暮らしなどお墓を維持して行くことが現実的にむずかしくなる時代がやってきて新しいスタイルが登場してくるのでしょう。遺骨をお墓に納めてもお参りしてくれる人がいないと・・・最近は海や山に散骨したり宝石に加工して指輪にするなんて話も聞きますね。昔とちがって遺言書を書いたりエンディングプランをまとめたり人生の最期にも自己責任の時代がやってきました。
法要にはたくさんの親族が遠方からも足を運んでくれてとてもありがたい気持ちと同時にすっかりお年を召して時の流れを実感しました。80代の方々は口ぐちに『みんなに会うのもこれが最後かもしれないよ。』なんて言うので『そんな寂しいこと言わないでください。』なんて会話もちらほら。お帰りになる方以外はお寺の近くで祖父が好きだったお寿司屋さんの広間を貸りて献杯です。車の方が多いのでお酒を飲んだ方を母がお宅や駅までお送りする係となり私たちは実家へ戻ってお茶の準備です。
実家に寄られる方は法要に参加してくれた方のうち30人くらいでしょうか。玄関は靴でいっぱい。和室も座卓を3つ繋げても足りなくて座る場所もないくらいの大混雑です。昔はいつもこんな感じでわいわいと集まっていましたが祖父が亡くなってからはずいぶんひさしぶりで子供の頃を思い出しました。30人以上もいるとグラスや湯飲みだけでもたいへんな数でキッチンと和室を行ったり来たり。途中喪服から着替える人やタバコを吸う人小さな子供を休ませる人などを別の部屋にご案内したりしてにぎやかに過ごしました。
こういうことがないとなかなか集まる機会も少なくなったのできっとたくさんの方がお仏壇を囲んでくれて人が集まるのが好きだった祖父もとても喜んでくれていることでしょう。高齢化社会を実感してこれから先思うように集まれるかどうかわかりませんがこうして無事に法要を終えてみなさんをお見送りしてほっと一息です。駅まで送迎係をしてくれた姉夫婦ももどって夜は家族水入らずで食卓を囲みました。ひさしぶりの家族団らんです。普段は家族でゆっくり過ごすこともないのでとても良い機会となりました。
今回あちこちで『次は誰かわからないからね。』『この歳になると昨日まで元気だった人が急になんて良くあることだから。』とか『身の回りの整理をしているところだから是非うちにいらっしゃい。いいものは譲りたいのよ。』とそんな会話が聞かれて少しづつ兄弟で話し合っておかなくてはいけない現実的な問題が迫っていることを感じました。
88歳で祖父が亡くなったときに長生き志向だった祖父の意思もあって備えがなくドタバタと大変だったので当時新聞で紹介されていたエンディングプランの冊子を取り寄せて家族に希望を整理しておくといいと渡した記憶がありますがその後使われているかどうかその場所さえもわかりません。遺言書はお正月や誕生日に毎年書き直した方がいいと聞きますがみなさんはお考えになっていますか?
備えあれば憂いなし?残す程の財産もないからなんて言わずにこういう機会に考えてみるのもいいかもしれませんね。